Monday, May 19, 2014

物造り

伝統工芸には、どうやって造ったのか?と思うものが沢山あります。

木材ひとつにしても昔はすべて手で切り出し、柱や板への加工も手作業。
木を柱にしたりするにも手斧(ちょうな)を使った手加工。

石工は石を読み、ノミを当てる箇所ひとつで大きな岩を割る事も出来ます。
それは職人の勘と身体意識に頼る部分など、代々伝えられていく技術。

日本刀は、「折れない、曲がらない」という相反する特徴を兼ね備えています。金属で唯一鉄が鍛錬し、火入れすることで初めて強度を増します。含有される炭素量や火入れ時の熱する鉄と水の温度にも関係します。しかし、昔は炭素含有量や温度を図る道具はありませんでした。

熟練の技術には、機械技術では達成できない人の身体意識が働いています。それは、五感や直感を総動員しながら代々に渡り改善しながら培われてきた技術。

ところで、電卓や携帯電話のアドレス帳のおかげで、暗算や電話番号の記憶の必要も無くなりました。気がつくと便利さと引き換えに、我々の脳は、退化を起こしているとも言えます。このまま便利さだけを追い求めると私たちは、使わない脳の領域が減って行く事になるような恐怖感を感じます。

脳の退化を起こさないためにも、自然との調和だけでなく、機械との共存というバランスを各々意識することが必要な時代に入っていると思います。手間暇かけることを惜しまない生活も大切でしょう。

私がビジネスで目指すのは、共存という守りだけでなく、そこから新たに創り出す「共創」です。

昨今、安い労働力を求め、日本から中国へ工場移転が進みました。

引き換えに物造りという生産技術のノウハウを失うことになっています。そして、 製造過程から生まれる改善のアイデアなどから新しい物造りへ繋がる道も閉ざすことになります。

度を越した海外への製造移転は、自滅の道を歩んでいるようにしか見えません。

それは伝統工芸存続と根っこは、同じ問題を抱えていると思います。ノウハウは、どんな便利な世の中になったといっても本やビデオで伝えることが出来ない部分があります。体感を介在し、身体に染み付いて初めて次世代へと伝承していけるものだと思います。

そうした手間暇のかかる伝統工芸の存続は、日本だけでなく世界各地で深刻な問題に直面しているでしょう。個人的には、日本刀を皮切りにこうした伝統工芸の存続のために、海外に市場を求めてみたいと小さな運動を始めています。そうしたことに共感できる人々との輪(和)を拡げていきたいと思います。

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